女性活躍を推進するためには?
女性活躍推進法とは
日本は急速な人口減少局面を迎え、将来の労働力不足が懸念されている中で、国民のニーズの多様化やグローバル化に対応するためにも、企業等における人材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可欠となっており、女性の活躍推進が重要となっています。
また、企業自身にとっても、採用や育成等に多大なコストを投じた女性社員が能力を高めつつ継続就業できる職場環境にしていくことは、人材の確保・定着や社員のモチベーションの向上など、多岐にわたり大きなメリットがあります。
このような状況を踏まえ、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため、国、地方公共団体、民間事業主(一般事業主)の各主体の女性の活躍推進に関する責務等を定めた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下「女性活躍推進法」という。)が2016年(平成28年)4月から全面施行されました(2025年度(令和7年度)末までの時限立法)。
(出所)厚生労働省 『女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!』パンフレットより抜粋
一般事業主行動計画とは
当初、女性活躍推進法における一般事業主行動計画の策定は、常時雇用する労働者数301人以上の事業主に義務付けられていましたが、改正女性活躍推進法(2019年(令和元年)6月5日公布)等にもとづき、現在は常時雇用する労働者数101人以上の事業主に拡大されています。
常時雇用する労働者数によって、多少取り組み内容が異なりますが、一般事業主行動計画の策定が義務付けられている事業主は
・自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
・一般事業主行動計画の策定、社内周知、公表
・行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
・女性の活躍に関する項目の情報
を実施しなければなりません。
基礎項目による状況把握
自社の女性活躍の状況を把握する際、必ず把握しなければならない基礎項目というのがあります。
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女の平均継続勤務年数の差異
・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
・管理職に占める女性労働者の割合
の4項目です。
まずは全ての企業が、上記基礎項目によって、自社の女性活躍の状況がどのようになっているのかを把握します。
選択項目による状況把握
基礎項目を把握した上で、自社の実情に応じて状況把握することが効果的である選択項目を選びます。
選択項目には、下記の通り2種類の項目群があります。
- 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
- 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
男女の賃金の差異の状況把握 ※2022年(令和4年)7月8日から必須項目
さらに、常時雇用する労働者301人以上の事業主を対象として、2022年(令和4年)7月8日から男女の賃金の差異が情報公表の必須項目に追加されました。
男女間賃金格差の主たる要因は、役職(管理職)、勤続年数、労働時間等となっているそうで、女性活躍の指標のひとつとして男女の賃金の差異についても公表しなければならなくなりました。
一般事業主行動計画の策定、社内周知、公表
自社の状況を把握し、課題を分析した後は、その課題を解決するために具体的な行動計画を策定しなければなりません。
下記の通り、業種によって労働者の男女比には差があります。
既に女性の比率が高い企業と低い企業とでは課題も異なりますので、行動計画も自社の課題の合わせたものにしていきます。
従業者数を男女比でみると、男性は「電気・ガス・熱供給・水道業」「鉱業,採石業,砂利採取業」「建設業」などが高く、
(出所)総務省統計局 事業所の従業者数
女性は「医療,福祉」「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」などで高くなっています。
そして、行動計画を策定後は、その行動計画を社内に周知し、外部にも公表しなければなりません。
公表の方法としては、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載、自社のホームページへの掲載 などがあります。
行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
行動計画を策定したら、電子申請、郵送又は持参により管轄の都道府県労働局に届け出ます。
また、「一般事業主行動計画策定・変更届 次世代法・女性活躍推進法一体型」を使用して、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画と一体的に行動計画を策定することもできます。
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画と重複する項目も多いので、可能であれば計画期間を同一にして、一体型の届け出を行うことを検討しても良いかもしれません。
注意が必要なのは、次世代育成支援対策推進法は令和6年度末までの時限立法であるのに対し、女性活躍推進法は令和7年度末までの時限立法である点です。
今後延長されるかどうかはまだわかりませんが、女性活躍推進法の方が1年長いので、もし次世代育成支援対策推進法が令和6年度末までとなった場合には、その後は女性活躍推進法のみの行動計画にする必要があります。
『えるぼし』認定を目指す
一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する状況が優良である事業主は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定『えるぼし』認定を受けることができます。
認定を受けた事業主は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品や広告等に付すことができ、女性活躍推進企業であることをPRすることができます。
厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」は、学生や求職者の方が企業研究を行うための情報提供の意味合いもありますので、認定を受けた事業主であることをPRすることにより、優秀な人材の確保や企業イメージの向上等につながることが期待できます。
他にも、機関投資家の多くが「女性活躍情報」を企業の将来の業績に長期的な影響がある情報と位置付けており、将来の業績予想をしたり、投資判断をしたりする際の参考にしているそうです。
『えるぼし』認定を受けているということは、国が定めた評価基準を満たしていることの証しですので、企業の女性活躍に対する姿勢を確認することができます。
まとめ
冒頭の厚生労働省のパンフレットでも謳われているように、企業等における人材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可欠な時代になってきており、女性活躍に消極的な企業は、徐々に競争力を失っていくかもしれません。
共働き夫婦が増え、男女ともに未婚者が増えている中で、男性だから育児や介護をしなくてもいい時代ではなくなっています。仕事と育児・介護の両立のためには、長時間労働を減らし、性別や年齢に関わらず、全ての労働者がライフワークバランスの取れた、働きやすい環境で働くことが重要になってきています。
女性が働きやすい環境を整えることは、男性にとっても働きやすい環境となり、企業全体の価値を高める結果になってきます。一般事業主行動計画の策定が義務付けられているから、とりあえず行動計画は立てて届け出ましたではなく、行動計画に沿って取り組んだ結果を評価し、必要があれば見直したり、新たな目標を追加して、より良い企業にしていく努力が必要になってきます。
社内の人材だけではなかなか難しいという企業の代表者又は担当者の方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。伴走支援で一緒に考えていきたいと思っております。